会長挨拶
会長 松田 尚久
(東邦大学医学部内科学講座 消化器内科学分野 教授)

この度、第65回日本消化器がん検診学会総会会長を拝命いたしました。皆様のご支援とご協力に心より感謝申し上げます。本総会は横浜パシフィコ会議センターにて、対面での現地開催を中心に、オンデマンド配信を併用する形式で実施いたします。テーマは「消化器がん検診の新たな挑戦-10年後を見据えて」といたしました。このテーマには、進化する医療技術や社会の変化に対応しつつ、歴史ある日本の検診システムをさらに発展させ、未来の消化器がん検診のあり方を探求する思いが込められています。
次世代の消化器がん検診を実現するには、最先端技術を積極的に取り入れると同時に、全国的な組織型検診プログラムの構築が重要です。たとえば、全国がん登録との連携を目指した検診データベースの構築は、がん検診データを一元化することで、検診の質向上、標準化、精度の客観的評価を可能にします。このような仕組みの実現には多くの課題が予想されますが、10年後を見据えた基盤整備を今から進めることが不可欠です。
技術面では、AIを活用した画像診断や遠隔診断システムが効率性と正確性の向上に寄与する可能性があります。また、血液や体液を用いるリキッドバイオプシーなどの非侵襲的な検査法は、受診者の負担を軽減しながら早期発見率を高める新たな手法として注目されています。特に、近年、顕著な増加を示している膵がんについては、検診の実施の是非を含めた議論を深める必要があり、社会的合意を形成するための具体的な取り組みが求められます。リスクの高い群を効率的に抽出する方法や、新しい診断技術の普及と社会実装への取り組みが重要な課題となります。さらに、対策型大腸がん検診における大腸内視鏡検査の導入については、将来的なブレイクスルーとなる可能性が期待されますが、実用化に向けたさまざまな課題に対応する具体的な方策が必要です。たとえば、精度管理の強化、モニタリング体制の整備、報告システムの構築が不可欠であり、これらの課題に対する実践的な解決策を模索することが重要です。
本総会では、これらの課題について幅広く議論し、10年後の消化器がん検診の理想像を描くことを目指します。基調講演、シンポジウム、ワークショップなどを通じて、最新の研究成果や実践事例を共有し、活発な意見交換の場を提供いたします。また、若手研究者や医療従事者の育成にも力を入れ、次世代を担う人材の支援を積極的に進めてまいります。消化器がん検診は、がんの早期発見・早期治療を通じ、多くの命を救う重要な役割を担っています。本総会がその役割をさらに強化し、より多くの人々の健康増進に寄与する機会となることを心より願っております。横浜の地で皆様と直接お会いし、共に未来を語り合えることを楽しみにしております。皆様のご参加と多数の演題応募を心よりお待ち申し上げます。何卒よろしくお願い申し上げます。